お猿の戯言 homosapiensaru's babble


2008年12月31日[水] あとわずかで今年も終わるなぁ


今年はとにかく早かった。
昨日から体調が優れない。11・12月とかなり忙しかったのでずいぶんと疲弊してしまったのだろう。休みに入るといつも体調を整えるべく身体が変調を知らせる。最悪な年の瀬となってしまった。まぁでもこの2ヶ月、仕事面では充実した時間を過ごすことができた。来年もこの調子が続くといいのだが、来年は相当の冷え込みが予想されると誰もが言う。
慌てても仕方が無い。より良いものを志向し創るまでよ!

除夜の鐘が鳴り始めた…。



2008年12月29日[月] 今年ももうすぐ暮れて行く…。


我が研究室の人数は3・4年生と院生と研究生を合わせて100名近くに膨れ上がり(これは尋常じゃない!)、うまく廻らぬときもあり、正直学生たちが可哀想な時が多々あった。来年はもう少し落ち着くがそれぞれの個性を見ながらうまく才能を伸ばしてやらねばならない。今年の反省点を活かししっかりと運営しよう。自分の方の仕事もしっかりこなしつつ、絵もこつこつ描き、教育と大学運営にも力を注ぎ、充実した一年としよう!



2008年12月13日[土] 忙しさの合間を縫って…。


個展の煽りを受けて溜まってしまった仕事にヒーヒー言っている。
そんな最中、それでも観たい展覧会に足を運んでしまった。

滋賀県は甲賀忍者の里にある、MIHO MUSEUMに出掛けた。
京都駅から14分、石山という駅に向かい、そこからバスで1時間ほど行ったところにある。
数年前、乾山展を観に行って以来二度目の訪問である。

今回の展覧会は、「大和(やまと)し美(うるわ)し 川端康成と安田靫彦」展 である。
明日、14日までの開催でいつものように慌てての観覧となってしまった。

今回のお目当ては、良寛の書である。
安田靫彦は良寛の書の蒐集家でもあり、その一部が展示されるということで是が非でも実物が観たくて出掛けてしまった。個展も終了し、自分にご褒美の意も込めて旅立ちと相成った。

七言詩 芳草萋萋春将暮 ⓒ良寛
七言詩 芳草萋萋春将暮 ⓒ良寛

いやぁ、すごいすごい!もう我が魂の喜んでいること!喜んでいること!
良寛の書の展示は一室のみであったが、「七言詩 芳草萋萋春将暮」が特に良かった。単純に手許に欲しいと思った。これは軸装と併せて素晴らしかった。文字の墨の色と書かれた紙の色、その周囲の軸装のための用紙との見事な融合。なんとも言葉では言い表せないのだが、作られたものという作為を微塵も感じさせないその宇宙というか自然そのものというか、そんなものになっているのだ。図録が今手元にあるのだが、その書が掲載されているページを開くと、モノクロで書の部分のみが印刷されている。実物の持っている空気感やその雰囲気は全く持って伝えられていない。絵画の展覧会の図録もそうだが、特に書の展覧会の図録は文字色が墨なだけにモノクロの印刷という場合が多く、書そのものの持っている風合いが感じられないことが多くて残念なことが多い。

和歌一首 貞心尼に代りてよめる<br>ⓒ良寛
和歌一首 貞心尼に代りてよめる
ⓒ良寛


文字の好みだけから言うとこちらの方がいいのだが、実物は総合的に上のものの方が格段に良かった。

こんなことを人に話したら、良寛の書の詩なら、その詩の文学的な内容に感動しているんですかと問われ驚いた。
自分が書に触れてまず、感じていることは何かと考えてみると、書かれている言葉の意味には無頓着であることがわかる。文字の意味を観ているというよりもむしろ抽象画を観ているような心持ちだ。文字のコンポジションであるとか、それが書かれている紙の色や肌合いを含めた総合的な絵画的空間として把握していることに気がついた。もちろん言葉の意味も無論いいものを希望するのが前提であるが…。

良寛の書以外でこの展覧会で感得したものと言えば、宗達の絵や辻が花裂などが挙げられるが、随所に安田靫彦の言葉が展示されており、その言葉が心に沁みたものだ。
二つほど、ここに掲載しておこう。

「芸術は人格の表現である。幾多の伝記よりも一個の遺作が能く其の全人格を表白する。」

「品位は絵画の各要素の調和の完美にあるとも云へるが、背後に潜在する作家の人格と感情の高さによって霊妙な力を現はしうるのである。」

自分が、良寛の書に興味を持ったのは20歳の頃のことだ。そんな自分だから古い美術に興味が行くのも当然であるが、温故知新とはよく言ったもので古き良きものにはとんでもない情報量が秘められている。そこを正しく理解すべくいいものに触れていたいと思う。最後に、安田靫彦の言葉をもうひとつ。

『岡倉天心先生の言葉に「美術史を研究するのは、ただに過去を記述するのに止まらない。すべからく未来の美術を作る素地をなさなくてはならない。過去と将来との中間となつてこれを結合する任務の、吾人の責任は重大だ」と云はれております。私達もなおさら作家としてすぐれた古美術について、これを充分理解するに足る直観力を養はなければならないのです。』

なお、この展覧会は、4月4日から5月10日まで千葉市美術館(他にも)に巡回します。

→ http://www.ccma-net.jp/exhibition_02.html